セルフサロンの台頭や10代の需要増加で「脱毛市場」が拡大?
今や男女問わず、多くの人が「ムダ毛」の悩みを抱えており、自宅だけでなくエステサロンや医療機関で脱毛をしている。コロナ禍で一時期、落ち込みを見せたエステティックサロン市場は回復傾向にあり、新たなビジネスとして「セルフ脱毛サロン」も話題になっている。
「脱毛に関する全国意識調査」で女性は半数以上が脱毛を経験
ヘアケアメーカー大手のアデランスは2022年1〜2月、『脱毛に関する全国意識調査』を実施した。47都道府県の20〜60代の男女計4,888人を対象としたアンケートで、調査結果によると脱毛を経験したことがある人は全体の34.2%であった。男女別では、男性が14.2%に対して女性は54.2%と半数以上が脱毛経験者だった。
脱毛経験率が高い年代と脱毛方法
年代別に見た脱毛経験率とその方法は以下のとおりだ。(脱毛方法は複数回答可)
この結果から分かるのは、20〜30代で特に脱毛経験率が高く、その中でも脱毛サロンを利用したことがある人が半数以上に及んでいることだ。一方で40代以上では、脱毛器などを使った自宅でのセルフケアが主流となっている。
ちなみに、都道府県別に見ると、脱毛経験のある人が多い県は以下のとおりだった。
- 1位(44.2%)長野県・熊本県
- 2位(43.3%)愛知県・香川県
- 3位(41.3%)福島県・長崎県
エステティックサロン市場の現状
調査会社の矢野経済研究所が2022年1月に発表した調査によると、脱毛市場を含む2021年度のエステティックサロンの市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比2.4%減少の3,270億円と見込まれた。2020年度も前年度比7.4%減と落ち込んでおり、引き続きコロナ禍の影響が大きい。
2021年度の市場規模(見込み)では、全体の7割を占めるレディス施術市場(脱毛、美顔、痩身など)は前年度比3.6%減、物販市場は前年度比0.5%増だ。施術分野は、コロナ禍での外出自粛やまん延防止等重点措置がマイナス要因となった。一方で物販分野は、オンライン販売などが伸びてプラスだった。
調査では、2022年度はコロナ禍の収束が期待できることから市場規模はプラスに転じ、前年度比0.1%増の3,272億円と予測している。
脱毛ビジネスの魅力
2019年時点で、エステサロン業界における脱毛市場の売上シェア率は約2割に上り、新規参入も増加している。脱毛ビジネスが人気を集める理由としては、次のような理由がある。
- ニーズが高い
- 資格や技術が不要
- 低価格化が進んでいる
冒頭の意識調査結果が示しているように、若者を中心に脱毛を経験している人は多く、市場のニーズは高い。また、施術者に特殊な資格や技術がいらないので、人件費を抑えることができる。さらに近年は、機器の技術開発によって低価格で高品質の脱毛サービスを提供することができるようになった。
「セルフ脱毛サロン」や子どもの需要も?
脱毛市場では、時代の変化とともに新たな需要やビジネス形態も生まれている。最近は、ユーザーの利便性を重視した「セルフ脱毛サロン」や、10代以下を対象とした「キッズ脱毛」などのニーズが高まっているという。
「セルフ脱毛サロン」で無人経営、24時間営業も
「セルフ脱毛サロン」や「無人脱毛サロン」と呼ばれる形態の脱毛サロンが話題だ。サロン用の脱毛機器をセルフで利用できるようにしたサロンで、施術者がいないため人件費を抑えて低価格でサービスを提供している。それに加えて、月額制の通い放題プランや予約の取りやすい24時間営業、追加オプションでエステティシャンを派遣するサービスを設けるなど、各社が工夫を凝らしている。
10代の需要も増加、親世代の影響か
10代以下の年齢層での脱毛ニーズも高まっている。脱毛サロン「エピレ」では、7〜15歳の女性が対象の「キッズ脱毛」の新規顧客が、2011年からの10年間で約55倍になったという。
水泳やバレエなど習い事で肌を露出する機会が多かったり、小学校高学年になるにつれて美容意識が高まったり、子ども本人の意向によって脱毛することもあるだろう。また、子どもの親世代は脱毛経験率が高い30代が多く、親がサロン脱毛の経験者であるため、抵抗がないことも影響しているようだ。
脱毛市場の拡大に期待
脱毛市場は、需要の高さからビジネスチャンスと捉えた異業種からの参入も増えている。今後コロナ禍が落ち着きを見せれば、久々の旅行やリゾート地に出かけるために、ムダ毛を気にする人が増えるかもしれない。セルフサロンや低価格で高性能な機器の台頭でコストを抑えた経営形態もあり、今後さらなる市場の拡大に期待したい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)